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それが運命の恋ならば
第8章 その薔薇の名前は 〜千晴の告白〜
「政彦兄さんを好きじゃないのに結婚するの?」
憤然と尋ねる。

「嫌いじゃないわ。
結婚なんて、それで充分だわ。
…私の両親に比べたら、随分ましな方だもの…」
寂しげな微笑みは、紫織の複雑な家庭を思わせた。

気がつくと千晴は叫んでいた。
「僕は嫌だ。
紫織さんが好きでもないひとと結婚するなんて…!」

そうじゃない。
そんな綺麗事じゃない。
紫織が、他の男のものになるのが嫌なのだ。
耐えられないのだ。

遮二無二紫織の華奢な肩を引き寄せ、抱き竦める。

「貴女が好きだ!大好きだ!
だから、政彦兄さんと結婚しないで…!
誰のものにもならないで…!」

甘く微かにほろ苦い花蜜の薫りが、千晴に纏わりつく。
歳上のひとなのに腕の中の紫織は、驚くほどにか細く儚げで、強く抱けば壊してしまいそうだ。

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