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それが運命の恋ならば
第8章 その薔薇の名前は 〜千晴の告白〜
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稀に庭園やバルコニーで二人きりになると、紫織は千晴を見上げて、美しい瞳を細めた。
「…千晴様はまたお背がお高くなられましたわね…。
すっかり追い越されましたわ」
優しいけれど、他人行儀な言葉だった。
「17になりました」
千晴はじっと紫織を見つめる。
…紫織は変わらず美しい。
いや、益々辺りに照り映えるような、薫り立ち咲き誇る華やかな薔薇のようなあでやかさだ。
「…もうそんなに…。
時が過ぎ去るのは早いものですわね…」
紫織はふと遠い眼をした。
微かな寂しさが透けた眼差しだ。
だから、焦れたように告げる。
「もうすぐ大人です。
僕は…」
紫織の白い手を捉えようとするのをひらりと躱される。
「…千晴様には早くもご縁談がおありと伺いましたわ。
旧財閥系のお家のお嬢様とか…」
千晴は形の良い眉を顰める。
「そんなもの、周りが勝手に騒いでいるだけです」
構わず紫織は続ける。
「ご縁談のお方は武者小路美以子様でしょう?
…先日、私のアロマ教室に見えましたわ。
千晴様のことを色々教えて欲しいと仰いました。
…美以子様は、もうすっかり千晴様に恋をしていらっしゃるようでした…」
武者小路美以子…。
一度、大叔母が花見の会でわざとらしく紹介した時に挨拶した娘だ。
…薄くそばかすが浮いたミルク色の肌を桜色に染めながら千晴を見上げていたっけ…。
けれど、何の興味も関心も覚えなかった。
「それで?
貴女はどうされたのですか?」
苛立ったように尋ねる。
「…千晴様はお美しくてお優しくて聡明で…ご縁談のお相手としては理想的なお方ですとお答えしましたわ。
美以子様はすっかりはにかんでいらして…。
可愛いお嬢様だわ…」
紫織は薄く笑った。
千晴の胸がかっと熱く燃え沸る。
気がつくと、紫織の華奢なか細く白い肩を掴んでいた。
「なぜそんなことを⁈
僕は貴女が好きなのに…!
よくもそんなことが言えますね!」
「…千晴様はまたお背がお高くなられましたわね…。
すっかり追い越されましたわ」
優しいけれど、他人行儀な言葉だった。
「17になりました」
千晴はじっと紫織を見つめる。
…紫織は変わらず美しい。
いや、益々辺りに照り映えるような、薫り立ち咲き誇る華やかな薔薇のようなあでやかさだ。
「…もうそんなに…。
時が過ぎ去るのは早いものですわね…」
紫織はふと遠い眼をした。
微かな寂しさが透けた眼差しだ。
だから、焦れたように告げる。
「もうすぐ大人です。
僕は…」
紫織の白い手を捉えようとするのをひらりと躱される。
「…千晴様には早くもご縁談がおありと伺いましたわ。
旧財閥系のお家のお嬢様とか…」
千晴は形の良い眉を顰める。
「そんなもの、周りが勝手に騒いでいるだけです」
構わず紫織は続ける。
「ご縁談のお方は武者小路美以子様でしょう?
…先日、私のアロマ教室に見えましたわ。
千晴様のことを色々教えて欲しいと仰いました。
…美以子様は、もうすっかり千晴様に恋をしていらっしゃるようでした…」
武者小路美以子…。
一度、大叔母が花見の会でわざとらしく紹介した時に挨拶した娘だ。
…薄くそばかすが浮いたミルク色の肌を桜色に染めながら千晴を見上げていたっけ…。
けれど、何の興味も関心も覚えなかった。
「それで?
貴女はどうされたのですか?」
苛立ったように尋ねる。
「…千晴様はお美しくてお優しくて聡明で…ご縁談のお相手としては理想的なお方ですとお答えしましたわ。
美以子様はすっかりはにかんでいらして…。
可愛いお嬢様だわ…」
紫織は薄く笑った。
千晴の胸がかっと熱く燃え沸る。
気がつくと、紫織の華奢なか細く白い肩を掴んでいた。
「なぜそんなことを⁈
僕は貴女が好きなのに…!
よくもそんなことが言えますね!」
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