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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
凪子は慌ただしく別れのキスを繰り返し屋敷を去る李人を表玄関の車寄せから見送った。
遠ざかる李人のベンツを、夢心地のまま見つめる。
…先ほどのやり取りを思い出しながら…。


…『急いで家に戻り、泰彦氏にお目に掛かるお約束を取り付けます。
貴女が再び私の元に来ていただけるお許しをいただかなくては…』

凪子は心配気に尋ねた。
『…もう一度、婚姻届を出さなくてはならないのですよね…?』
…まだ離婚してから2ヶ月ほどしか経っていない。
婚姻届は受理されるのだろうか…。

李人が照れたような色を、その端正な貌に浮かべた。
『…実は、離婚届はまだ出していません…』
『え?』
凪子は眼を見張った。
『…どうしても出す気になれなくて…。
…だから、貴女はまだ私の妻なのです』

『李人様…!』
凪子は李人に抱きつき、自分からキスをした。

『…良かった…!…私…私…』
言葉にならない嬉しさが涙とともに溢れ出す。

『…凪子…』
李人がその美しい指で凪子の透明な涙を拭い、囁いた。

『…ありがとう…凪子…』

…愛している…。

その言葉より甘い口づけを、彼は再び凪子に与えたのだ…。

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