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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
…さあ…。
千晴様とお話ししなくては…。
心を決めて歩き出そうとする凪子の背後から、その美しい声はそっと掛かったのだ。

「…もしかしたら、千晴様は今の方と決闘しなくてはならないのかしら…?」
やや可笑しみを含んだ優しい声だ。
凪子ははっと振り返る。

…シフォンの淡い菫色のアフタヌーンドレスを纏ったほっそりとした身体…。
緩く結い上げた髪は陽に透けて亜麻色に見えた。
その肌は透き通るように白く、雪のようであった。
形の良い柳眉、黒眼がちの瞳は大きくしっとりと濡れていた。
細い鼻梁、そしてやや肉惑的な口唇は珊瑚色に艶めいている…。
…夢のように美しくしなやかに妖艶な女性が庭園の入り口、アンジェラの花が蔦うアーチの下に佇み、凪子に微笑みかけていた。

…なんて…なんてお美しい方なのかしら…。
凪子は思わず見惚れる。

…そうして直感的に、閃いた。
おずおずと、そのひとに尋ねる。

「…あの…。
…失礼ですが、紫織様…でいらっしゃいますか…?」
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