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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
温室はしんと静まりかえっていた。
招待客は皆、庭園に集まっている。
庭の片隅にある温室に足を運ぶものはいないのだ。
薔薇の香気が生々しく辺りを覆い尽くしていた。
…季節問わずいつでも薔薇の花が楽しめるようにと贅を尽くしている温室の主役は、やはりこの花なのだ…。
…紫織がそのひんやりと美しい白薔薇の前に、優美に佇んでいた。
「…ガブリエル…。
久しぶりに見るわ…」
独り言のように、紫織が呟く。
それは、過去だけでなく、失われた何かを懐かしみ、愛おしむような言葉だった。
「…昔、千晴様に教えていただいたの。
色々な種類の薔薇を…。
薔薇は野生のものを含めると、何千という種類があるのですって…。
私はその美しさと…何より薫りに心惹かれて、アロマテラピーの世界に入っていったの…。
…だから始まりはこのガブリエル…」
…懐かしいわ…。
ため息のような囁きだった。
それはどこか哀惜を秘めているような、切ない響きであった。
凪子はある決意を秘めて口唇を開いた。
「…紫織様。
失礼を承知で申し上げます。
…紫織様は…千晴様を愛していらっしゃるのではないのですか?
千晴様が紫織様を愛していらっしゃるのと同じに…」
…紫織がゆっくりと振り返った。
招待客は皆、庭園に集まっている。
庭の片隅にある温室に足を運ぶものはいないのだ。
薔薇の香気が生々しく辺りを覆い尽くしていた。
…季節問わずいつでも薔薇の花が楽しめるようにと贅を尽くしている温室の主役は、やはりこの花なのだ…。
…紫織がそのひんやりと美しい白薔薇の前に、優美に佇んでいた。
「…ガブリエル…。
久しぶりに見るわ…」
独り言のように、紫織が呟く。
それは、過去だけでなく、失われた何かを懐かしみ、愛おしむような言葉だった。
「…昔、千晴様に教えていただいたの。
色々な種類の薔薇を…。
薔薇は野生のものを含めると、何千という種類があるのですって…。
私はその美しさと…何より薫りに心惹かれて、アロマテラピーの世界に入っていったの…。
…だから始まりはこのガブリエル…」
…懐かしいわ…。
ため息のような囁きだった。
それはどこか哀惜を秘めているような、切ない響きであった。
凪子はある決意を秘めて口唇を開いた。
「…紫織様。
失礼を承知で申し上げます。
…紫織様は…千晴様を愛していらっしゃるのではないのですか?
千晴様が紫織様を愛していらっしゃるのと同じに…」
…紫織がゆっくりと振り返った。