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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
くすくすと紫織が笑い出した。
やや陽気すぎるような弾けるような笑い方だ。

「何を仰るかと思えば…。凪子様ったら…」
一頻り笑い終え、まだその花のような口唇に微笑みを残しながら凪子を見た。

「…凪子様はまだお若いから、愛だ恋だのを美化しすぎていらっしゃるのよ。
千晴様に何とお聞きになったか分かりませんけれど、私たちはそんなロマンチックな関係ではないのですよ…。
…千晴様は、最初から私に亡くなったお母様の面影を重ねていらっしゃる…。
それを恋と誤解されているのだわ…」
微かに寂しげに、長い睫毛を伏せた。

「…では紫織様は?
紫織様の本当のお心は、どちらにあるのですか?」
「…凪子様…」

凪子はずっと考えていたことを語り出す。
「…紫織様も千晴様のことを愛していらっしゃるから敢えて浮名を流していらっしゃるのではないのですか?」
「…凪子様…。
何を仰るの…」
紫織が形の良い眉を微かに寄せる。

勇気を奮い、続ける。
「…私、千晴様がずっと愛していらっしゃる方が、そんな不埒な方だとは思えないのてす。
何かきっと理由があってなさっているのではないかと、ずっと考えていたのです。
…紫織様にお目にかかって、今、ガブリエルをご覧になっているお貌を拝見してその想いが強くなりました。
紫織様もまた千晴様を愛していらっしゃるのではないか…と。
…紫織様の真実の愛を…教えていただけませんか…?」

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