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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
…その美しいひと、紫織は怯えたようにびくりと華奢な肩を震わせ、背を向けた。
そのまま、去られてしまいそうで咄嗟に声を掛ける。
「待ってください!紫織さん!」
千晴は慌ただしく紫織に駆け寄る。
「…紫織さん…」
すらりとした美しい後ろ姿に、その愛おしい名を呼ぶ。
…二人きりになるのは、何年振りだろうか…。
ふわりと、甘くてほろ苦い蜜のような薫りが漂う…。
…紫織さんの、薫りだ…。
胸が締め付けられるような懐かしくも狂おしい感情に支配される。
…やがて…
「…凪子様が、千晴様の婚約者なのだと思っておりました…」
ぽつりと、美しい声が聞こえた。
「…え…?」
「…千晴様がとうとうお嫁様をお迎えになる…。
それはお若くてお美しくて素晴らしいお嬢様だと…。
しかも、ご本家の泰彦様のお嬢様だと…。
こんなにお似合いのお相手はいらっしゃらないでしょう…。
喜ばしいことだと、思いました…」
「紫織さん、凪子さんは…」
訂正しようとした矢先…
「…いいえ…。嘘です」
低く掠れた声が、しかし、はっきりと響いた。
「…紫織さん…?」
「そんなこと、少しも思いませんでした…。
全然喜ばしくなんかなかったわ。
ひたすら悲しくて、寂しくて…そして…」
茫然とする千晴を、紫織がゆっくりと振り返った。
涙に濡れた美しい瞳が、千晴をひたりと見上げる。
「…貴方が…恋しかったわ…」
そのまま、去られてしまいそうで咄嗟に声を掛ける。
「待ってください!紫織さん!」
千晴は慌ただしく紫織に駆け寄る。
「…紫織さん…」
すらりとした美しい後ろ姿に、その愛おしい名を呼ぶ。
…二人きりになるのは、何年振りだろうか…。
ふわりと、甘くてほろ苦い蜜のような薫りが漂う…。
…紫織さんの、薫りだ…。
胸が締め付けられるような懐かしくも狂おしい感情に支配される。
…やがて…
「…凪子様が、千晴様の婚約者なのだと思っておりました…」
ぽつりと、美しい声が聞こえた。
「…え…?」
「…千晴様がとうとうお嫁様をお迎えになる…。
それはお若くてお美しくて素晴らしいお嬢様だと…。
しかも、ご本家の泰彦様のお嬢様だと…。
こんなにお似合いのお相手はいらっしゃらないでしょう…。
喜ばしいことだと、思いました…」
「紫織さん、凪子さんは…」
訂正しようとした矢先…
「…いいえ…。嘘です」
低く掠れた声が、しかし、はっきりと響いた。
「…紫織さん…?」
「そんなこと、少しも思いませんでした…。
全然喜ばしくなんかなかったわ。
ひたすら悲しくて、寂しくて…そして…」
茫然とする千晴を、紫織がゆっくりと振り返った。
涙に濡れた美しい瞳が、千晴をひたりと見上げる。
「…貴方が…恋しかったわ…」