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それが運命の恋ならば
第9章 その薔薇の名前は 〜ローズガーデンの恋人たち〜
「…紫織さん…!」
「貴方が恋しかったわ。
…貴方を誰にも渡したくはなかった。
こんな…こんな気持ちを…貴方は…知りもしなかったでしょう⁈」

いきなり紫織が白く細い手で千晴の胸を叩き始めた。
美しい眼差しが、千晴を睨みつける。

「嫌いだわ、貴方なんか!」
「し、紫織さん!」
「私の気持ちなんか…気づこうともせずに…!」

紫織は全ての優美さも慎みもかなぐり捨てたかのように泣きながら千晴に掴みかかる。
「大人になったら連れ去ってくれるって約束したじゃない…!
ここから私を…!
誰も知らない世界に…!」
…大人になったら…
貴女をここから連れ去るよ…。
そうして、二人だけの世界に行くんだ…。

初恋の熱に冒された、14歳の自分が陽炎のようにゆらりと現れる。

千晴は雷に撃たれたかのように身体を震わせ、息を飲む。
「紫織…さん…」
「ずっと待っていたのに…!
嘘つき…!嘘つき…!嘘つ…」
子どものように千晴を叩き続ける紫織を引き寄せ、強く抱き竦める。
女へのいじらしさ、そして何より愛おしさが、熱い源泉のように湧き出でる。

「紫織さん…!ごめん…!」

胸の中、紫織が弱々しく拳を叩く。
「…嫌い…貴方なんか…。
大嫌…ん…っ…」

…涙に濡れた紅い口唇を、情熱のままに奪い、甘く長い口づけを交わし続ける。

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