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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「…お父様…」
涙ぐむ愛娘の美しい瞳に、思わず吸い寄せられる。

泰彦はふっと穏やかに凪子を見下ろし、微笑った。
「けれどそうしたら、李人くんは生まれてはこなかったがね」
「…まあ…」
凪子は大きな瞳を見張る。

「それは困るだろう?」
悪戯めいた口調で尋ねると、凪子はその透き通るように白くほっそりとした首筋を桜色に染め、眼を伏せた。
そうして、直ぐに小さく頷いた。

「…困りますわ…」

その声に、その表情に、凪子が漸く辿り着いた真実の愛の影がはっきりと見えたのだ。

…泰彦は、昨日不意に現れた李人のことを思い出す。


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