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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「…凪子…!」
李人は凪子の白い夜着の胸元に、そっと指を差し入れた。
「…っ…」
ひんやりした長い指が、凪子の白い乳房を弄る。
「…ああっ…!」
思わず処女のような声を上げてしまう。

「…凪子…」
…愛しているよ…。
鼓膜に囁かれる低い美声は、あくまでも優しい。

「…あ…っ…ん…」
口づけを繰り返され、帯が解かれてゆく…。
夜着が肩から滑り落ちるその刹那…
鮮やかに脳裏に浮かんだのは、ひとりの男の面影だ…。

「…あっ…!」
短く叫び、凪子は部屋の隅に眼を遣る。

「どうしたの?凪子…」
李人が怪訝そうに覗き込む。

「…あの…。
…禅さんは…。
…もう…立ち会わなくて…よろしいのですか…?」
躊躇いながらおずおずと尋ねた。

李人との閨には常に禅が居た。
番人のように…。
…いや、李人の影のように…。
…そう。自分は旦那様の影なのだと、禅が言ったのだ。
影だから、恐れることも恥ずかしがることもないのだと、凪子の自尊心を守ってくれたのだ。
その影の禅が、今夜はいない。

李人の美しい闇色の瞳が、どこか艶めいた色を帯び、微笑んだ。

「…ええ。
これからはもう寝室には貴女と私の二人きりですよ…」

…それとも…
と、微かに悪戯めいた笑みを浮かべ、凪子に貌を寄せる。

「…禅が居た方が良かった?」

凪子は大きな瞳を見開き、恐れるように首を振った。

「いいえ…いいえ…!
そんなこと、ありません…!」

胸に浮かぶ雄々しい男の面影を、必死に振り払う。

李人の首に白くか細い腕を絡め、強く引き寄せる。

「…凪子?」
不思議そうに端正な眉を跳ね上げる李人に、自分からキスをする。

…そうして…

「…もう…抱いてください…」

…めちゃくちゃにして…。

甘く濡れた声で、囁いたのだ…。






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