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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
車は長閑な海岸線をひた走る。
…太平洋に面した外房とはまた雰囲気が異なる穏やかな海だ。
心なしか、海の色も明るく、煌めく波濤は太陽の色を映す黄金色だ。その美しい風景は見ているだけで飽きない。
波間にぷかりぷかりと浮かんでいるのは、小さな漁船だ。
かもめの鳴き声は、子守唄のように心地よい。
凪子はうっとりと車窓を眺めていた。

…暫くすると、
「…お腹が空いたでしょう?
少し遅くなってしまったけれど、お昼にしましょう」

そう言って李人が車を停めたのは、小さな港町近くのこじんまりとした食堂の駐車場だった。

…いかにも素朴そうな、けれどどこか品のある佇まいの食堂の入り口には手作りの木のプレートが掲げられていた。

…「紫陽花食堂」

凪子のために助手席のドアを開けながら、李人は懐かしそうに告げた。

「…昔、母に連れられて、よく訪れた想い出の食堂なのです」



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