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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「…まあ…!やっぱり李人くん?
懐かしいわ…!何十年ぶりかしら?」
澄佳と呼ばれた女性は感激したようにカウンターの中から歩み寄る。

涼しげな水色のストライプのシャツに紺のデニム、白いギャルソンエプロン…。
美しく長い黒髪をシニヨンに結い上げたどちらかというと地味な姿だ。
けれど、その煌めくような美貌が、すべてにきらきらと眩しいような輝きを与えている…そんなひとだった。

「…二十年ぶりくらいかな…?
僕が東京の中学に通うようになってからはこちらに来ることはなかったから…。
澄佳さん。お元気そうで、何よりです」
やや照れたように答える李人も、初めて見る少年のような初々しい表情だ。

「…旅館を継がれて、新しくホテル業も始められた…と風の便りで伺っていたわ。
…一緒にあの海で泳いだ李人くんがご立派になられて…」
懐かしそうに語りながらふと、澄佳は李人の後ろに遠慮勝ちに控える凪子に気づき、大きな瞳を見開いた。

「…まあ…。
もしかして、そちらのお美しいお嬢様は…」

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