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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「…李人さんは昔、夏休みにお母様とよくこの店にいらしてくれていたの」

李人と凪子は立ち上がり、改めて挨拶をする。
「初めまして。一之瀬李人です。
こちらは妻の凪子です。
…この近くに母の実家の別荘があって、子どもの頃、よく澄佳さんと一緒に遊んでいただいていました。
今日は二十年ぶりに妻と伺わせていただきました」

それを聴いた男性は嬉しそうに涼しげな眼を細めた。
「ああ、そうなんですか。
それは懐かしくていらっしゃることでしょうね。
…初めまして。清瀧柊司です。澄佳の夫です」

話を聞いていたブロンズ色に焼けた逞しい体躯をした男性が、声を掛けた。
「あれ?もしかして、李人か?
あの上品なボンボンの?」

李人が端正な眼を見張った。
「漁師のおうちの涼太くん?
そうなんじゃないかと思ってたんだ!
全然変わらないね」
一気に店内が懐かしい柔らかな空気に包まれた。

「何何?私も紹介してよ。
あ、自分でしちゃお!
三島瑠璃子です。涼太さんの妻で、柊ちゃんの妹で…あ、妹って言っても腹違いの妹なのね。あと、澄佳さんの義理の妹でっす!
…ウフフ…なんかややこしいね?」

くすくす笑う瑠璃子の額を涼太が軽く弾く。
「そこまで詳しく自己紹介しなくていいだろうが。
三島涼太です。よろしく」
涼太はぶっきらぼうながらも、そう凪子の眼を見てきちんと挨拶をしてくれた。

「一之瀬凪子です。
どうぞよろしくお願いいたします」
やや緊張したように頭を深々と下げる凪子に、瑠璃子が歓声を上げた。
「かっわい〜い!新妻?新婚さん?
なんかさ、ほんのちょっと前の私みたいじゃない?
ねね?涼ちゃん!」

涼太は呆れたようにため息を吐いた。
「お前がこんなにしおらしかったことがあったか?
お転婆娘の跳ねっ返りめ」

「あ、ひど〜い!涼ちゃん!
こんなに美人で可愛い女の子、世界中探してもいないって私にプロポーズしたくせにィ!」

涼太が慌てて大きな手で瑠璃子の口唇を塞ぐ。
「あ、馬鹿!こんなとこで言うんじゃねえ!」

大人たちは一斉に笑い出し、類はきょとんと愛らしい眼を丸くした。



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