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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
「また是非来てくださいね」
「新婚旅行を楽しんで」
「李人。今度、船に乗せてやる。
若奥さんもな」
「いつでも待ってるからね!凪子ちゃん!」

二人が澄佳や柊司、涼太や瑠璃子たちに温く送り出され、紫陽花食堂を後にしたのは、夕闇が濃く迫り、夜の帳が下り始めた頃であった。

「…着いたよ。
ここが母の別荘だ」
車が停められたのは、海岸線に面した小高い丘の上に建てられたこじんまりとした瀟洒な洋館の家の前だった。

薄墨色の夕闇の中、その白い家はひっそりと二人を静かに待ち受けるように佇んでいた。

…前庭には、夏の薔薇…サマースノーが咲き乱れていた。
蔓薔薇のそれは、門扉や家の外壁、パーゴラを覆い尽くし、さながら白薔薇の家のようだった。
その幻想的な薔薇の美しさに、凪子は息を呑むばかりであった。

「…綺麗…」
ため息混じりの言葉に、李人が振り返る。

凪子を見下ろし、美しい眼を細めて囁いた。

「…禅が丹精込めた薔薇だ。
彼も今、ここに来ている」




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