この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
家の中はきちんと清潔に整われていた。
掃除も行き届き、ランプの傘やマントルピースに至るまでもぴかぴかに磨きあげられている。
品の良いアンティークの家具や調度品は、李人の母親の趣味だろうか。
この別荘は殆ど使用していないそうだが、必要なものはすべて揃い、まるで二人を待ち受けていたかのようだった。

「通いの家政婦さんに週に一度掃除や風通しを頼んでいるんだ。
禅も庭の手入れに来るしね」
ね、禅?
李人は禅を振り返り、柔かに笑った。

禅は目礼をした。
そうして、そのままダイニングにある黒檀のキャビネットに向かった。
「…何をお飲みになりますか?」
どうやら禅が酒の用意をするらしい。

「僕はヘネシーで。
凪子にはシャンパンを開けてやってくれ。
ヴーヴ・クリコが冷えているはずだ」

「…私がいたします」
慌てて立ち上がる凪子の腕を李人が引き寄せ、自分の隣に座らせる。

「君はここにいて。
今夜は僕たちの新婚旅行なのだから」
髪を優しく撫でられ、一瞬たじろぐ。

キャビネットの向こうで、禅が微笑んだ。
「そうですよ。奥様。ごゆっくりされてください」
夜の深い海の色の瞳…。
眼が合い、再び胸の鼓動が高鳴る。
「…ありがとうございます…」
…気づかれないようにしなくては…。
動揺を、悟られてはならない。
何の動揺なのか、凪子にはまだその正体は分からない。

禅が用意したブランデーのボトルから、バカラのグラスに琥珀色の酒を注ぐ。
凪子には繊細なフルートグラスに、よく冷えたシャンパンを器用に注いだ。
上質な葡萄の薫りと、細かな泡が夢のように辺りを満たす。

李人がもうひとつグラスを取りに行き、
「さあ、禅も座って。
今夜は一緒に飲もう。
禅も昔、夏休みはよくここに来たよね?
お母様といと、それから僕と禅…。
気難しい父親が居なくて、誰にも気を遣わなくて良くて、本当に楽しかった…」
…懐かしいな…。
李人はそっと呟いた。


/349ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ