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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
寝室に入るなり、李人は凪子を引き寄せ口唇を奪おうとした。
凪子は思わずその手を拒んだ。
「どうしたの?」
少し尖った声で答える。
「…澄佳さんのこと…好きだったんですね…」
李人は美しい眼を見張り、可笑しそうに、愛おしそうに笑った。
「焼きもち?」
凪子は頷く。
途端に柔らかく優しく抱き竦められた。
「…嬉しいな…。
凪子に嫉妬されるなんて…。
話して良かった」
「…揶揄わないで…」
貌を背けると、そのまま顎を捉えられる。
その瞳は真摯に澄んでいた。
「揶揄ってないよ」
「うそ」
「本当だよ。
凪子が僕の過去を嫉妬してくれるのは、凄く嬉しい。
僕のことを愛してくれているのが感じられるからね」
「…李人様…」
「澄佳さんのことは好きだったけれど…それは禅が彼女を好きだと分かったからだな」
「…え?」
凪子を抱きしめたまま、静かに続ける。独り言のように。
「…禅は生まれた時から僕の傍にいた。
乳兄弟だったからね。
本当の兄弟のようだったけれど、そうじゃない。
…生まれた時から僕に仕え、従ってきた。
僕が欲しがるものは黙って譲ってくれた。
口に出さなくても察知して、先に差し出してくれた。
僕は禅が大好きだったから、それが悲しかった…。
…一度くらい、拒んで欲しかったな…」
穏やかだが、はっとするほどの寂寥感に満ちた声だった。
…その夜、李人はどこか狂ったように、また、甘く濃密に濃厚に、蕩けるように凪子を愛した。
凪子は思わずその手を拒んだ。
「どうしたの?」
少し尖った声で答える。
「…澄佳さんのこと…好きだったんですね…」
李人は美しい眼を見張り、可笑しそうに、愛おしそうに笑った。
「焼きもち?」
凪子は頷く。
途端に柔らかく優しく抱き竦められた。
「…嬉しいな…。
凪子に嫉妬されるなんて…。
話して良かった」
「…揶揄わないで…」
貌を背けると、そのまま顎を捉えられる。
その瞳は真摯に澄んでいた。
「揶揄ってないよ」
「うそ」
「本当だよ。
凪子が僕の過去を嫉妬してくれるのは、凄く嬉しい。
僕のことを愛してくれているのが感じられるからね」
「…李人様…」
「澄佳さんのことは好きだったけれど…それは禅が彼女を好きだと分かったからだな」
「…え?」
凪子を抱きしめたまま、静かに続ける。独り言のように。
「…禅は生まれた時から僕の傍にいた。
乳兄弟だったからね。
本当の兄弟のようだったけれど、そうじゃない。
…生まれた時から僕に仕え、従ってきた。
僕が欲しがるものは黙って譲ってくれた。
口に出さなくても察知して、先に差し出してくれた。
僕は禅が大好きだったから、それが悲しかった…。
…一度くらい、拒んで欲しかったな…」
穏やかだが、はっとするほどの寂寥感に満ちた声だった。
…その夜、李人はどこか狂ったように、また、甘く濃密に濃厚に、蕩けるように凪子を愛した。