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それが運命の恋ならば
第11章 ふたつの月
…次に目覚めたとき、月は高く中空に上がり、その青ざめた光は寝室の隅々まで照らし出していた。

何度性交を交わしたのか、もはや凪子には分からなかった。
凪子の真珠色の肌には、李人が放った夥しい牡液でしとどに濡れそぼり、その可憐な乳房は愛撫されすぎて、濃い桜色に染まっていた。
身体のどこもかしこも、李人に押された愛と欲望の烙印で熱く疼いている。

褥はしっとりと二人の汗と精と愛液で濡れ、乱れきっていた。
李人は細身ながら逞しい裸体のまま、凪子を抱き込むようにして眠っていた。
凪子はそっと微笑み、その美しい横貌に口づけを落とす。


…不意に、夢のような幻覚のような記憶が甦る。
激しい愛の営みの最中、眼を開くと凪子を抱いていたのは、禅だった。
あのブロンズ色の分厚い強靭な身体が、凪子を荒々しく凌駕する。
凪子は激しく狼狽し、抗い…しかし最後には男を受け入れた。
お互いに貪るように需め合い、乱れ、凪子の身体は熱い愛蜜を滴らした。
そうして、痺れるような甘美な悦楽の頂点に達したのだ。

…まさか…そんな…。
凪子は息を呑み、思わず起き上がる。
恐々と、己れの華奢な身体を抱き竦める。

…ただの夢だわ…。

けれど、なぜそんな背徳とも言える夢を見るのか…。

…その答えに辿り着く勇気を、凪子は持たなかった。

凪子は手早く白い夜着を着込むと、李人を起こさぬように寝室を後にした。




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