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それが運命の恋ならば
第2章 初夜
「…そんな…」
…たしかに、酷い仕打ちだ。
けれど、自分は先程初めて両親が居ると知らされたばかりなのだ。
自分は…どうしたら良いのか…。
何ができるというのか…。
…何より、李人から放たれる凪子への憎悪の感情が恐ろしかった。
そして哀しかった。
あんなにお優しかったのに…。
あんなに愛し気に、私を見つめてくださったのに…。
…本当に、目の前にいるこの方は、同じ李人様なのだろうか…。
凪子の心を見透かしたかのように、切長の眼を細める。
「…そう。
本来なら貴女とは何の関係もないことです。
貴女はむしろ被害者でしょう。
…けれど、私は高遠氏に対して同じことをせずにはいられないのですよ。
自分の大切なものを踏み躙られ、傷つけられたら、どんな気持ちがするか…。
彼に思い知らせてやらねばなりません」
甘い口づけをするかのように、貌を近づけられる。
…けれど、その美しい黒い瞳の中には、昨夜のような温かな慈しみの色は微塵もない。
「…李人様…」
冷ややかに微笑う。
「私を憎みなさい。
…高遠氏は今、病の床に着いておられます」
凪子は息を呑んだ。
「…そして、最近ようやく貴女のことを突き止められ、盛んに会いたがっておられるそうですよ。
高遠氏にお子はおられません。
貴女だけが血を分けた実のお子なのです。
…そして貴女が、かの高遠家の唯一の後継者だ」
…だから…
と、不意に李人が優しく凪子を抱擁した。
伽羅の冷たい薫りが濃く纏わりつく。
「…私は貴女をここに閉じ込める。
未来永劫、決して離さない。
貴女をどこにも行かせはしない。
…貴女を、永遠に私に隷属させる…」
…私なりのやり方でね…。
低く嗤うと、淡々と、その名を呼んだのだ。
「…禅。
入りなさい」
…たしかに、酷い仕打ちだ。
けれど、自分は先程初めて両親が居ると知らされたばかりなのだ。
自分は…どうしたら良いのか…。
何ができるというのか…。
…何より、李人から放たれる凪子への憎悪の感情が恐ろしかった。
そして哀しかった。
あんなにお優しかったのに…。
あんなに愛し気に、私を見つめてくださったのに…。
…本当に、目の前にいるこの方は、同じ李人様なのだろうか…。
凪子の心を見透かしたかのように、切長の眼を細める。
「…そう。
本来なら貴女とは何の関係もないことです。
貴女はむしろ被害者でしょう。
…けれど、私は高遠氏に対して同じことをせずにはいられないのですよ。
自分の大切なものを踏み躙られ、傷つけられたら、どんな気持ちがするか…。
彼に思い知らせてやらねばなりません」
甘い口づけをするかのように、貌を近づけられる。
…けれど、その美しい黒い瞳の中には、昨夜のような温かな慈しみの色は微塵もない。
「…李人様…」
冷ややかに微笑う。
「私を憎みなさい。
…高遠氏は今、病の床に着いておられます」
凪子は息を呑んだ。
「…そして、最近ようやく貴女のことを突き止められ、盛んに会いたがっておられるそうですよ。
高遠氏にお子はおられません。
貴女だけが血を分けた実のお子なのです。
…そして貴女が、かの高遠家の唯一の後継者だ」
…だから…
と、不意に李人が優しく凪子を抱擁した。
伽羅の冷たい薫りが濃く纏わりつく。
「…私は貴女をここに閉じ込める。
未来永劫、決して離さない。
貴女をどこにも行かせはしない。
…貴女を、永遠に私に隷属させる…」
…私なりのやり方でね…。
低く嗤うと、淡々と、その名を呼んだのだ。
「…禅。
入りなさい」