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それが運命の恋ならば
第2章 初夜
「…いや…い…やです…。
やめて…やめて…ください…」
禅の手から逃れようと、凪子は身を捩り、我が身を守るかの様に蹲る。

…一瞬、禅の手が痛ましいように止まった。

「禅」
冷静だが強い声が飛ぶ。

やがて禅の武骨な手が、何事か決意したかのようにしごきを再び捉え、解き出した。

「…いや…やめて…やめてください…。
こんな…ひどい…。
なぜ…こんなことを…」
泣き出す凪子に李人は優しく髪を撫でる。
そうして、朱に染まる耳朶を噛みながら甘く囁いた。

「…凪子さん。
私と禅はね、兄弟のように育ったのですよ。
私は禅のすべてを知っているし、禅もまた私のすべてを知っています。
私の初めての閨の相手は、禅の恋人でした。
私たちは夜の秘密も共有するのです。
…だから美しい奥様のすべても、禅に見せなくてはなりません」

しごきが衣擦れの音を立てながら、巧みに解かれてゆく…。
薄桃色のしごきの尾が長く伸びてゆくのを、恐怖に打ち震えながら見守るしかない。
長襦袢の襟元を、震える白い指先で掻き合わせているが、そんなものは何の盾にもならない。
禅のざらりとし、ごつごつとした指が長襦袢のあわいに掛けられ、そのまま強い力で押し開かれた。

凪子は大きな瞳を見開き、叫んだ。

「…い…や…ぁ…!
やめ…て…おねが…い…やめてください…!」



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