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それが運命の恋ならば
第2章 初夜
「…そんな…嘘…。
大切だなんて…」
泣きながら…けれど懸命に声を絞り出す。
「…私は…貴方の復讐の道具なのでしょう…?
高遠の血が入った娘なら…李人様は誰でも良かったのではありませんか…?
…私なんか…私なんか…」
…お好きでもない癖に…。
惨めすぎて、その言葉は飲み込んだ。
…そうだ…。
好きなら、こんな酷い仕打ちができるわけがないのだ。
好きどころか、この方は私を憎んでいるのだから…。

李人の怜悧な瞳が一瞬ぴくりと微かに動いた。
けれど彼はすぐさま一笑に付した。

「…貴女は賢くて、なかなかに骨がある。
…そう。
貴女は私の復讐の道具ですよ」

けれど…
優しさと勘違いしそうな、柔らかな眼差しだった。

「…貴女はあり得ないほどに美しく、煌々しく、可憐な…稀有な女性だ…」

…まったく腹立たしくなるほどに…!

そう微かに苦しげな口調で呟くと、凪子の口唇を荒々しく奪った。

「…んんっ…!…あ…ああ…ん…っ…」

濃密な口づけの合間に、李人は冷ややかな笑みを浮かべた。

「…貴女は私の腕の中から、ずっと逃れることはできないのですよ…。
…私が貴女を飼い殺して差し上げます…。
この家の中で。
何処にも行かせはしない。もちろん高遠氏のところにもね…。
…私だけの美しい奥様…。
大切に大切に愛でて差し上げますよ…」

…けれど…。

「…但し、常に禅がいる前でね」

その冷たい微笑みを含んだ一言が、凪子を闇夜よりも暗く膿んだ地獄の沼へと突き落としたのだった。
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