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それが運命の恋ならば
第1章 出逢い
凪子は緊張しながらお薄を点てた。
…何か粗相があったら、この尼寺は取り潰されてしまう。
そうなったら、天涯孤独な自分は行くところがなくなってしまう。
不安と恐怖から茶筅を持つ手が震える。
必死で点てたお薄を、李人は美しい所作で口にして、頭を下げた。
『…結構なお手前でした』
低音のよく通る美声だった。
茶器を戻す手も大きく美しい。
…若く美しい男性を見慣れない凪子は一瞬、緊張も忘れ、目を奪われた。
男はゆっくりと凪子に向き直り、まるで天気を尋ねるかのように、さらりと尋ねたのだ。
『…凪子さん。
貴女はお付き合いしている方がいらっしゃいますか?』
あまりに意外な質問に呆気に取られた凪子の代わりに、庵主がにこやかに答えた。
『そんなひとはあらしまへん。
このひとはほんまにおぼこ娘で…。
まだまだネンネなんどす。
…凪子さん、ここはもうええ。
お下がりやす』
有無を言わさぬ言葉と眼差しだった。
凪子はこの場を去れることにほっとして、頭を畳に擦り付けるようにお辞儀をして、茶室を辞した。
…何か粗相があったら、この尼寺は取り潰されてしまう。
そうなったら、天涯孤独な自分は行くところがなくなってしまう。
不安と恐怖から茶筅を持つ手が震える。
必死で点てたお薄を、李人は美しい所作で口にして、頭を下げた。
『…結構なお手前でした』
低音のよく通る美声だった。
茶器を戻す手も大きく美しい。
…若く美しい男性を見慣れない凪子は一瞬、緊張も忘れ、目を奪われた。
男はゆっくりと凪子に向き直り、まるで天気を尋ねるかのように、さらりと尋ねたのだ。
『…凪子さん。
貴女はお付き合いしている方がいらっしゃいますか?』
あまりに意外な質問に呆気に取られた凪子の代わりに、庵主がにこやかに答えた。
『そんなひとはあらしまへん。
このひとはほんまにおぼこ娘で…。
まだまだネンネなんどす。
…凪子さん、ここはもうええ。
お下がりやす』
有無を言わさぬ言葉と眼差しだった。
凪子はこの場を去れることにほっとして、頭を畳に擦り付けるようにお辞儀をして、茶室を辞した。