この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
凪子は足音を忍ばせ、廊下を歩く。
中庭に面した縁側の硝子戸を音がしないようにそっと開ける。
…人の出入りの多い家だ。
どこで、トキに合うか分からない。
玄関からでは目立ってしまう。
とにかく、人がいないところから出なくては…。
それしか、頭にはなかった。
敷石の上に女物の紅い鼻緒の草履が揃えられていた。
凪子のためのものか、分からなかったがそんなことに構ってはいられない。
素早く鼻緒に白足袋の足先を通し、そのまま庭に降りた。
…早く…早く逃げなくては…。
震える脚で、一歩ずつしっとりと苔生した地面を踏み締める。
…早く…早くこの家を出ていかなくては…。
ここに居て、このままずっと、あの方の復讐の道具になるのは、耐えられない…。
愛されてもいないのに…いや、憎まれているのに、妻でいる訳にはいかない…。
…どこでも構わない…。
ここでなければ…。
譫言のように呟きながら、凪子は裏木戸を探しながら飛び石を伝って行った。
中庭に面した縁側の硝子戸を音がしないようにそっと開ける。
…人の出入りの多い家だ。
どこで、トキに合うか分からない。
玄関からでは目立ってしまう。
とにかく、人がいないところから出なくては…。
それしか、頭にはなかった。
敷石の上に女物の紅い鼻緒の草履が揃えられていた。
凪子のためのものか、分からなかったがそんなことに構ってはいられない。
素早く鼻緒に白足袋の足先を通し、そのまま庭に降りた。
…早く…早く逃げなくては…。
震える脚で、一歩ずつしっとりと苔生した地面を踏み締める。
…早く…早くこの家を出ていかなくては…。
ここに居て、このままずっと、あの方の復讐の道具になるのは、耐えられない…。
愛されてもいないのに…いや、憎まれているのに、妻でいる訳にはいかない…。
…どこでも構わない…。
ここでなければ…。
譫言のように呟きながら、凪子は裏木戸を探しながら飛び石を伝って行った。