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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
「いらっしゃいませ〜!」
…ド派手なショッキングピンクの扉を開けた途端、男の野太い声が飛んだ。

「あら〜!桃馬ちゃん!いらっしゃあ〜い!
今日は遅かったわねえ。悪友たちはさっき帰っちゃったわよ〜。
…あらあらあら?
そちらの綺麗なお姫様は?どなたどなた?」

…凪子は思わず固まった。
カウンターの中にいた三十代くらいの白いTシャツ姿の男は角刈りに筋肉質な…さながら大工か漁師のような逞しい体躯をしていたのだ。

「あらあらあら?お姫様?
どうされたのかしら?」
…けれど、言葉遣いや所作はしとやかな女性そのものだ。

「ケンちゃん。紹介するわ。
兄貴の嫁さんの凪子ちゃん」

桃馬の紹介に、ケンちゃんと呼ばれた男は甲高い声で叫び出した。
「んまあああ!貴女がリーくんのお嫁ちゃま?
きゃあ〜!なんて綺麗なお嬢様なの!
ああん!もうっ!アタシの失恋は決定ね!
でも仕方ないわあ!こんな綺麗なお嬢様なら…悲しいけれど…諦めるわああ〜!」
男はカウンターに突っ伏してさめざめと泣き出した。

呆気に取られる凪子に、桃馬は肩を竦めた。

「ケンちゃん。この店のオーナーで兄貴の中学の同級生。
モチ、オネエ」

男はガバリと顔を上げ
「ちょっと!桃ちゃん!説明がザツすぎ!
…小島健です。
このスナック、アマンのオーナーで〜す!歳は三十二歳。
乙女座A型。
リーくんはアタシの初恋のヒトなの。
よろしくネ!リーくんのお嫁様!」

にっこりと笑ったのだった。
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