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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
凪子は慌てて頭を下げた。
「は、初めまして。
凪子と申します。よろしくお願いいたします」

ケンは眼を細めながらうっとりとした口調で語り始めた。
「…リーくんがお嫁様を連れてきたらしい…て噂は早速聞いてたけど…本当に綺麗で清楚なお嬢様ねえ…。
ねえねえ、リーくんとどうやって知り合ったの?
恋愛?お見合い?
恋愛よねえ、凪子ちゃん、まだ、お若いものねえ〜。
リーくんが見染めたのかしら?
それとも凪子ちゃんから?」
矢継ぎ早の質問が飛ぶ。

口籠る凪子を庇うように
「いいだろ、そんなこと。
それよりお好み焼きミックス、二人前な!」
桃馬が言い放つと
「凪子ちゃん、こっち」
と手を強く引き、奥の席に導いた。

「ケンちゃんな、あんな感じにオネエだけどさ、お好み焼き、サイコーに美味いんだ。
騙されたと思って食ってみ」
人懐っこく笑う桃馬に
「…お好み焼き…ですか…。
私、初めて食べます…」 
素直に答える。
…尼寺では精進料理ばかりだった。
もちろん外食などしたこともない。
祭りや縁日にも行かせてもらったことはない。
ほぼ、籠の鳥の生活だった。
それを不満に思ったことはない。
それが孤児の自分には当たり前だと、諦めていたのだ。

カウンターから素っ頓狂な声が飛んだ。
「んまあ!お好み焼き初めて⁈」

「凪子ちゃん、尼寺育ちだからさ」
桃馬がフォローする。

「…へえ…。
尼寺育ちのお嬢様ねえ…。
…ま、リーくんぽいっちゃ〜ぽいかもねえ…」
と妙に納得しながら
「ヨシ!ならアタシが腕によりをかけて美味し〜いお好み焼きを焼いてあげるわね!
待っててね!」
ケンは生き生きと鉄板に火を点けたのだった。

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