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第3章 愛と哀しみの夜明け

「さあさあ、お待ちどおさま！
どうぞ召し上がれ！」
テーブルに置かれた大皿のお好み焼きからはソースの香ばしい匂いが漂い、美味しそうな湯気が立っていた。

「ケンちゃん特製ミックス焼きよお〜！
豚、海老、イカ、そしてモッツァレラチーズ入りのスペシャルバージョン〜！
凪子ちゃん、ごゆっくり召し上がれ！」
優しく勧められ凪子は静かに箸を取り、頭を下げた。

「…ありがとうございます。
それでは、いただきます」
…一口、口に入れる。
熱々の香ばしい豚肉や海老やイカの海鮮の風味とふわふわの生地、そして甘辛いソースとまろやかなマヨネーズ、マスタードのアクセントが口一杯に広がった。

長い睫毛が驚きに瞬かれる。
「…美味しいです…！
こんなに美味しいもの、初めて食べました…！
お好み焼き…て、本当に美味しいんですね…！」

桃馬とケンが同時におお…！と声を上げた。
桃馬は眼を細める。
「…マジか…。
そりゃ、良かったよ…。
ケンちゃんはさ、こう見えて実は東京の三つ星フレンチでスーシェフまでしてたらしいから、腕は確かなんだよ。
…なぜか今はこんな寂れた港町でショボいスナック経営してるオネエだけどさ…イテッ！何すんだ！」

ケンは素早くトレーで桃馬の頭を叩き、身悶えた。
「か、か、可愛いいい〜！
凪子ちゃん！今時、なんてピュアないじらしいお嬢なの！
…そりゃ、リーくんがホレるワケよねえ…。
もうもうライバルなんて思わないわ！
アタシ、凪子ちゃんのファンになっちゃった！
これからいつでもココに遊びに来てね！」

明るく盛り上がるケンに、凪子は恥ずかしそうに微笑み、頷いた。

…なんだか少し変わったひとだけれど、優しくて温かいひとだわ…。

…もっとも…
李人様は、私のことを憎んでいらっしゃるのだけれども…。

そう密かに寂しく思いながら…。