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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
桃馬はお好み焼きを突つきながら自分のことをぽつりぽつりと話しだした。

「…俺、兄貴と違っておバカだからさ。
学校もFランのバカ校だしさ。
勉強するのかったるくてサボってばかりでさ。
家に帰れば兄貴は厳しいし、トキは小うるさいし、やたらキュークツだから夜中ふらふらしててさ。
で、地元のダッセ〜ヤンキーに絡まれてムカついてボコボコにしてやってケーサツのお世話になったり、腹立ち紛れに万引きしてケーサツのお世話になったり、無免許で盗んだバイクで尾崎豊してケーサツのお世話になったりしてたワケさ」
「…はあ…」
「…ほんと、典型的なヤサグレボンボンよねえ」
ケンがカウンターの中で大袈裟にため息を吐く。

「…でもまあ、俺ももう十八だし、いつまでもバカやってるのもカッコわりぃし、そろそろマジになるかな〜て思ってるとこ。
…あんま兄貴にメーワクかけるのもなあ〜てね。
兄貴、ああ見えて俺に責任を感じてるからさ」
「…責任…ですか?」
「そ。
俺が生まれてすぐ両親は亡くなったじゃん?
兄貴は十五だったけど、多分親代わりのつもりで俺を育てようって思ったんだろうなあ〜てさ。
ところがその俺は、しょ〜もない落ちこぼれのワルになっちまったからさ。
きっと自分のせいだって思ってるんじゃないかなあ。
兄貴は高校を卒業すると東京の大学に進学して家を離れたからね。
俺の世話はトキに任せてさ。
だから、自分がもっとちゃんとついていたら…て思ってんじゃないかなあ。
…そんなこと、カンケ〜ないんだけどね。
俺が勝手にグレただけだからさ」
フンと鼻を鳴らした桃馬の整った横貌からは、李人への微かな愛情が感じ取れた。

凪子は静かに口を開いた。
「…羨ましいです…。
李人様は、桃馬さんを大切にされているのですね…」

…だから私が…憎いのだわ…。
そして何より、李人様のお母様とお父様を傷つけた…私の父親と言うひとが…。
深い哀しみが再び、凪子の胸に押し寄せる。

…同時に…。

…私の…父親…。
そんなひとがいたのだと、未だに信じられないような気持ちになる。

「ねえ、凪子ちゃん」
ふと、桃馬の箸が止まった。

「は、はい?」

「…お父さんに会いたい?」
凪子の心を読むかのように、桃馬が凪子を見つめて尋ねた。








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