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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
鈴蘭型の灯りが灯った青銅の門柱の前で、桃馬は自転車を停めた。
凪子はそろそろと座席から革草履の脚を下ろす。

一之瀬家に帰り着いたのは夜九時をとうに過ぎていた。
「疲れた?凪子ちゃん。
結局遅くまで俺が引き止めちゃったね。
ごめんね」
桃馬が済まなそうに金髪の前髪を掻き上げた。

…あれから、ケンの店で中間テストが近いという桃馬の古典のテキストを一緒に見て、古文の勉強をしていたのだ。

「凪子ちゃん、高校行ってないのにめっちゃ頭良くてビックリしたよ。
平家物語も源氏物語も論語も全部知ってたじゃん」

凪子は恥ずかしそうに首を振る。
「…庵主様に仕込まれました。
お寺ではお経が読めなくてはならないし、庵主様はお茶席を設けていたので、古典文学くらい知っていないとお客様のご接待が出来ないので恥ずかしい…て仰って…。
だから、たまたまです。
…それに…高校の教科書…て初めて読みました。
すごく楽しかったです。
ありがとうございました」
頭を下げる凪子を、桃馬が眩しげな眼差しで見下ろす。

「…凪子ちゃん。
…あのさ…俺、凪子ちゃんのこと…」

「…桃馬さん…?」

桃馬が凪子の肩に手を置いた刹那、杉戸の門扉が慌ただしく開かれた。

「凪子様!まあ、桃馬様も!
…ああ!今までどこにいらしたのですか!
ずっとお探ししていたのですよ!
もしや、誘拐されたのではと…!
もう少しで警察に連絡するところでした!」

蒼白な貌で駆け寄るトキの背後に、長身の李人の姿があった。
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