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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
離れの廊下を渡りきり、湯殿の前まで来ると、李人は脚を止め、凪子を振り返った。

凪子は身を縮め、俯いた。

…叱られる…!
もしかしたら…手を上げられるかもしれない…!
私が…勝手に家を離れたから…。
恐怖に身体が震える。

暫くして、李人の口から小さなため息が漏れた。

「…手が冷たい…。
すっかり冷えているではありませんか」
握りしめている手に、力が込められた。

「…あ…」
…李人の手のひらは大きくて温かかった。

「…お腹は、空いていませんか?」
思いがけず、優しい声が響いた。
「…は、はい。
大丈夫です」
ケンが夜食にと、リゾットを作って出してくれたのだ。

「…健の料理は、美味しかったですか?」
李人は幽かに、微笑んでいるようだった。

その微笑みに吸い寄せられるように、頷いた。
「…はい…。とても…」

躊躇うように李人の手が、凪子の白い頰に一瞬だけ触れ…離れていった。
…白檀の薫りが、ふわりと掠めた。

「…お風呂でゆっくり温まっていらっしゃい。
トキが入浴の用意をしています」

そのまま、凪子に背を向けた。

立ち去ろうとする背中に思わず声をかける。

「…あ、あの…!」

李人が脚を止め、ゆっくりと振り返る。

「…今夜は何もしません。
ゆっくりお寝みなさい」
仄かな灯りに照らされた端正な横貌は、驚くほどに優しかった。

「…あ…」

李人の姿は、そのまま闇の中へと消えていったのだ。
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