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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
翌朝、目覚めると隣の褥にやはり李人の姿はなかった。
凪子は昨夜、ひとりで寝付いた。
その後も、李人は寝室を訪れはしなかったのだろう。

…もう、出勤されたのかしら…。
少しだけ、落胆する。

やがてトキが凪子の着替えと髪の結い上げ、化粧を手伝いにきた。
…今日は鮮やかな京紅型の着物に苺色のしゃれ袋帯だ。
どれも見るからに趣味が良く、上質で高価そうなものばかりだ。
…私のために…用意してくださったのかしら…。
とても意外に思う。

「…旦那様は、朝食室でお待ちです」
凪子の心を読むかのように、トキが巧みに口紅を引きながら淡々と告げた。

「…え…?…李人様が…?」
…まさか、待っていてくれているとは思わなかった。

驚く凪子に、トキは無表情のまま伝えた。
「…昨日、旦那様は大層ご心配をされていました…。
あんな旦那様は、初めて拝見いたしました」

大きな瞳を見開く凪子に、もうそれ以上は説明はせずに
「…さあ、こちらに。奥様」
そう言うと恭しく一礼した。





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