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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
和洋折衷な母屋にある朝食室は、洋室な造りになっていた。
英国のマナーハウスにあるような優美なビクトリア朝の内装、意匠が至る所に施され、開け放たれたモスグリーンの出窓から差し込む朝陽は眩しく、洒落たパーゴラには早咲きの白い薔薇が揺れていた。
外からは、静かな潮騒も聴こえてくる…。

「…おはようございます。凪子さん」
チャコールグレーのスーツ姿の李人がテーブルに着いた姿で朗らかに微笑んだ。

「お、おはようございます…。
…遅くなってしまい、申し訳ありません…!」
頭を下げて詫びる。
…まさか、一緒に朝食を摂るとは思わなかったのだ。

正面の席に着くように優雅に手で指し示すと、李人はテーブルの上のニューヨークタイムズをゆったりと閉じた。

「よく眠れましたか?」
静かに尋ねられ、凪子はぎこちなく頷いた。

「…は、はい」
…あの…と、小さな声で続ける。

「…昨日は…勝手に出てしまい…すみませんでした…」
まだちゃんと詫びていなかった。

「…いいえ。
けれど、お出かけされたい時は、トキに一言お伝えください。
皆が心配いたしますから」
…そうして、優しい眼差しで見つめながら、呟くように告げた。

「…貴女がご無事で良かった…。
安心しました」

「…李人様…」

凪子は分からなくなってきた。
…今、眼の前にいる李人は、最初に会った時と寸分違わぬ優しく穏やかな…おかしなところなどひとつもない煌然とした紳士だ。

一昨日の…あの夜。
想像すらできないような非情な、酷薄な…そして狂気すら感じる淫らなことを強いた人物と、同一人物とは到底思えなかった。

…あれは…
凪子はぼんやり考える。
…もしかして…私が見た悪夢なのだろうか…。
すべてが私の妄想で、今、眼の前にいらっしゃる李人様が、本来の李人様なのだろうか…。

食い入るように自分を見つめる凪子に、李人は眼の端でいたずらっぽく笑ってみせた。
「さあ、朝食にしましょう。
我が家の朝はイングリッシュブレックファストなのですよ。
医師だった曽祖父がイギリス留学をした名残りの風習です。
…薄いトーストにマーマレード、ベーコンエッグズ、フライドトマト、そして、キドニービーンズ…これはなかなかに癖がありますが…。
…お口に合うと良いのですが…」
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