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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
「…お口に合いましたか?」
トキが先に温かなミルクをたっぷり注いだアッサムティーを淹れ終わるのを見届け、李人が尋ねた。

凪子は白いナプキンでそっと口唇の端を押さえながら、素直に頷いた。

「はい。とても美味しかったです」
…英国式朝食など、初めて食べた。
尼寺では朝は玄米粥と漬物だけだった。
…それをよく小さな頃はいじめっ子に揶揄われたっけ…。
そんな時、必ず助けてくれたのは、幼馴染の雄大だった。

…雄ちゃん…元気かしら…。
着いたら手紙を書くと約束していたのに、まだ書いていない。

…心配…しているだろうな…。


「それは良かった」
凪子ははっと我に帰った。

…さて…
李人が紅茶にひと口をつけたのち、ゆっくりと話を切り出した。

「…凪子さん。
貴女はとてもお勉強ができるそうですね?」
「…え?」
凪子が訝しげに美しい眉を寄せた。

「桃馬があれから色々話してくれました。
凪子さんは古典にとても詳しいと…。
桃馬に勉強を教えてくださったそうですね?」

「…そんな…。
たまたまです。
お寺で庵主様に古文や漢文を少し習ったり、自分で本を読んだりしただけですから…。
自己流です」
凪子は恥ずかしそうに俯いた。
…中卒の自分の学力や教養など、たかが知れている。
李人のようなインテリから見たら失笑レベルだろう。

「…凪子さん。
もっと、お勉強をしたいですか?」
「…え?」
その意外な言葉に、一瞬意味が分からなかった。

李人が穏やかに微笑んだ。
「…学校に通わせて差し上げることはできないけれど、家に家庭教師を招いて学習することは出来ますよ。 
…そう、たとえば…高卒認定試験に向けてのお勉強をしても良いのではないでしょうか?」
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