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それが運命の恋ならば
第3章 愛と哀しみの夜明け
…藍染の紬の着物姿の李人が、凪子を睥睨するように石畳みの上に佇んでいた。

透明の湯の中、凪子は思わず両腕で乳房を隠す。

「…なぜ隠すのですか?
そんなにも美しいものを、お隠しになる必要はないではありませんか?」
その怜悧な美貌に薄い笑みを刷きながら、李人がゆっくりと近づく。

「…い…や…。
…こないで…ください…」
咄嗟に本能的な恐怖を感じ、凪子は湯船の中を後退りする。

じりじりと湯船の淵まで追い詰めると李人は片膝を着き、愉しげに瞳を細めた。

「…なぜ?私たちは夫婦ですよ?
何を恥ずかしがられるのですか?」
言いながら、帯を解き、紬を肩からさらりと滑らせた。

「…っ…!」

一糸纏わぬ李人の姿に、凪子は思わずびくりと身を固くした。

…李人の象牙色の美しい筋肉の乗った身体、引き締まった下腹部、夏草の茂みのような下生え…。

そして…

「…貴女を犯したくて、こんなになっていますよ…」
硬く兆した己れ自身に手をやり、卑猥な手つきで触れて見せたのだ。
…その冷たくも淫蕩な眼差しは、朝の優しげな李人とは全くの別人のようだ。

「…い…や…こないで…」
…爛れた狂乱の初夜の記憶が蘇り、凪子は形の良い口唇を震わせた。

そんな凪子の様子にはお構いもなしに、李人は無造作に湯に入る。
透明な湯が激しく波打つ様が、新たな恐怖を呼び起こした。
李人は凪子の前まで来ると、荒々しくその腕を引き寄せた。

「…貴女のお父上への復讐は、まだ始まったばかりなのですよ」
冷ややかに笑うと、そのまま噛み付くように凪子の口唇を奪ったのだった。
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