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それが運命の恋ならば
第1章 出逢い
「…凪子様?
どうされましたか?
ご気分でもお悪いのですか?」
黙りこくっているのを案じた風の運転手の声で我に帰り、凪子は慌てて首を振る。

「…いいえ。大丈夫です」

凪子は上着のポケットから、そっと小さく折り畳まれたメモを取り出し、開く。

別れ際に、雄大から渡された連絡先とメールアドレスだった。

『…分かった。
凪子がそう決めたなら、もう何も言わない。
ただ、俺は…俺はどんなときも、いつでも、いつまでも、お前の味方だ。
お前が困ったり窮地に陥ったりしたら、すぐに飛んでゆく。
いつでも連絡してくれ。
それから、あっちについたら必ず連絡をくれ。
電話でも手紙でもいい。
約束してくれ。
…いいな?凪子…』
その真剣な真っ直ぐな眼差しは、子どもの頃から少しも変わってはいない。
その身体を張って全力で凪子を守ってくれた幼馴染の雄大そのままだ。


『…雄ちゃん…。
…ありがとう…』
涙ぐみ礼を言う凪子を、雄大が遮二無二抱きしめた。

『…凪子…!
…お前が…好きだ…!』
凪子の髪に貌を埋め、絞り出すような低い声は、微かに震えていた。


『…雄ちゃん…』
雄大の恋心を吐露され、胸が締め付けられるように痛んだ。
…掛け替えのない幼馴染みで、唯一の友だち…。
彼の恋心を、凪子はなんとなく気づいていたのだ。
気づいていて、けれど、雄大を失いたくなくて、気づかない振りをしていたのだ。
そんな自分を醜いと思う。
…けれど、自分を恋慕う青年に惜しまれつつ嫁ぐのだと思うと、歪んだ幸せを感じるのだ。
とても浅はかでみじめだけれど、雄大のおかげで、仄かに甘美な幸せに包まれるのだ。

…ごめんね、雄ちゃん…。
凪子は心の中でそっと詫びる。

『…ありがとう…。雄ちゃん…。
…忘れないわ…雄ちゃんのこと…。
…ずっと…忘れない…』
小さく答える凪子を、雄大は黙って強く抱き竦めた。


「凪子様。お屋敷が見えてきましたよ。
…あちらです」

運転手の指す方向を見上げる。

…どこまでも続く大和塀に囲まれた広大な敷地の奥、鬱蒼たる樹々を背景に、堂々たる数寄屋造りの屋敷が姿を現したのだ。





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