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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
窓の外が明るんで、やっとお開きになった一ヶ月前の婦人会で、あさひは客達の噂話から、自分を落札した主人に関するいくつかの可能性を得た。
情報、と断言出来ないのは、噂は噂に過ぎないからだ。
クリスマスも正月も、あさひは未だかつてなかった賑わいの中で過ごした。
底知れない富を持ち、人脈も広い佳子にしては、それらの行事はこぢんまりしていたのかも知れない。片手で数えられる程度の友人達がまばらに顔を出すのを除いて、あとは彼女と家政婦達が、無礼講で団欒を過ごす。
あさひもその中にいた。
相変わらず薄着をさせられてはいたにしても、聖夜にはツリーを飾ってケーキを食べて、年末は圭達がおせち料理をこしらえる時間、彩月に連れられてしめ飾りや門松を買いに出た。
年明け三日目、世間は新春のムードでも、来客の数は落ち着いていた。
家政婦達は、くじ引きで決めた二人一組で初詣へ行くことになり、あさひと同じ色を引いたのは美影。
着用の機会もなく振袖を多数所持しているという佳子に、淡いピンク色に白い鶴と金の鞠の柄の入った衣装を着せられたあさひは、昨年まで父親と共に詣でていた神社へ向かった。
佳子の館とあさひの住んでいた町は、近い。
同級生や教師に会うかも知れない、僅かな懸念があさひの頭を掠めたが、世間は意外と広いらしい。一年振りの境内に、見知った顔は見かけない。