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秘匿の闇市〜Midnight〜
第1章 愛玩少女の製造法

* * * * * * *

 とにかく薄着のメイド服に着替えたあさひは、外に戻った。

 育江が書類を抱えて待っており、彼女は、あさひの乳首が仄かに透けたエプロンの胸当てにバッジをつけた。二十七番、と数字が印字してある。


「お前はそのステージに上がって、お客さん達の言うことにしっかり従うんだよ。スカートの中を見せろと要求されたら見せなければいけないし、脱げと言われたら下着まで脱ぐの」

「待って、おばあちゃん、あすこは自分自身を競売にかけるための、オークション会場だって……」

「知っているよ。私はお前を高く値のつく女に育ててきたからね。五千円でも多く言い値を付けて下さるお客さんに気に入られて、おばあちゃんに恩をたんとお返し」


 やはりそうだったのか。


 疑問や憶測が解決すると、今度こそあさひは溜飲が下がった。

 そう言えば、育江は昔、不特定多数の男の要求に応える商売をして、生計を立てていたという。前に志乃に聞かされたところによると、あさひに祖父と呼べる身内がいないのは、そこに関係があるらしい。彼女も陽音も、父親の顔を知らない。彼女ら姉妹の父親が同じ人物かも、育江自身が把握していないのだという。


「分かったわ、おばあちゃん。おばあちゃんは今で十分に裕福だけれど、大切なのは気持ちだもの。私は感謝を返すつもりで、お客さんからお金をいただけば良いのね」


 テントから出てきた女がまた一人、陰鬱とした目であさひ達を盗み見ながら通り過ぎていった。透け感の強いベビードールにガーターベルト、網タイツという格好の女は、白い肌が黒いそれらによく映える。

 ややあって、係員があさひをステージの下手寄りの中央まで誘導した。壇上には、ざっと三十五人いる。淫らな格好をした女が目立つ中、男も十人前後いた。

 さっきまで無人だった半円状の客席は、人に溢れて、ステージからだと黒点の集合体に見える。前から二列目に座った育江だけが、あさひにははっきり区別がつく。







第1章 愛玩少女の製造法──完──
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