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秘匿の闇市〜Midnight〜
第2章 肉欲の競り市場
第三者に損害を与える依頼や違法薬物を例外に、すこぶる自由な深夜のフリーマーケットでは、人間オークションが始まっていた。
文字通り、競売にかかるのは人間だけだ。
目が慣れてくると、あさひは客席に並んだ無数の顔を確かめられた。
客のおよそ半分は、見るからに上等な洋服や装飾品を身につけている。そうでなくても、中にはテレビの政治ニュースで見かけた人物に似た顔もあり、富裕層であるのには間違いあるまい。一方で、ただステージを観賞しているだけの酔っ払いもいた。
オークションのルールとしては、一番のバッジを付けた人間から順にステージの中央に呼ばれ、買い手を募るというものだ。買い手達は好き好きに挙手して、出品者や商品本人に質問をしたり、入札価格を提示したりする。
司会進行を務めるのは、どこにでもいる感じの女だ。装いは会社員らと大差なく、体格も逞しい。
厳密には、あさひ達が細すぎるのか。志乃もあの女くらいの体格だし、やはりあのようなスーツ姿でどこかの会社へ働きに出ている。ただし育江に言わせてみれば、女が筋肉やら脂肪やらを余計に付けて、なけなしの月給のために男と同じ職に就くほど、みじめなことはないらしい。