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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
「戻ったぞー。おっ、あさひまた洋服たくさん買ってもらったな。志乃さん、いつも申し訳ありません。お代は……」
「おっ、剛史くん、お帰りなさい。トイレ長かったですね?プレゼントにそんな野暮はなしですよ。私、三十代にしては稼いでますから」
育江が帰宅して、剛史も含めて夕飯を家族で囲ったあと、あさひ達は寝支度をした。
あさひの私室は、三ヶ月前と同じまま残されていた。扉を閉めて、彩月と二人きりになれたところでその驚きを口にすると、彼女曰く、志乃達が勘繰らないよう育江なりに対策したのだろうということだ。
「志乃さん、明後日が仕事始めだったっけ?」
「はい。新年早々、今度は九州に出張です」
「お父さん家には行かないの?」
「元々、外で会うことがほとんどでしたから。彩月さんこそ、ごめんなさい。お父様、彩月さんのお休みが延びて残念がられていませんか」
「この世の終わりみたいな顔してたけど、仕方ないよ。他に目付け役いなかったし」
…──目付け役。
そう、分はわきまえなければいけない、と、あさひは自分に言い聞かせる。
彩月と二人で出かけられても、私的な時間を過ごせても、彼女にとっては仕事に過ぎない。あさひが逃げないための、佳子からの言いつけだ。