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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
隆曰く母親似らしい彩月は、確かに美しかった。この容姿から学生時分も随分ともてはやされたものだが、愛に飢えていた。愛を得たいがため、手段を選ばなかったほど。
そんな自分に似ているという女の顔を、ひと目見てやりたかったのに。…………
「…痛──…っ」
下腹部に痛みが走って目が覚めた。
痛みなどとっくに消えた傷が夢の切れ目に疼いたのは、昨夜、あさひと眠りに就いたからだ。悪夢に浮かされるようにして、美影に上塗りを請うたところで、夜が明けても名残りがあった試しはない。
幸福になりたかった自分と、幸福を知らずにいるあさひは、何が違うのか。
黒い髪に白い肌、こうも日本人の特徴を備えていながら、どちらかと言えば西洋の人形を想わせられる寝顔は、呑気に心地好さそうな息を立てている。
キスでも抱擁でも、好きな方をしてあげる。
就寝前、彩月はあさひにそう言った。戯れだった。すると彼女はしばらく考えたあと、眠るまで手を繋いで欲しいと答えた。
きっとあさひも、眠る時は一人が当たり前だったのだ。