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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
あさひは彩月の端末から、初めてのツーショット写真を覗く。
まるでお姫様と皇子だね、と志乃が唇の端を上げたのは、今日のあさひの格好のせいだ。
幾重ものシフォンのフリルに、ふんだんに使われたリボンやレース──…スカートの広がりを押さえつけないコートも昨年、志乃に見立ててもらったもので、周囲の客達と比べると、あさひは別世界から抜け出てでもきたようだ。
そうした客達から、時折、あさひは視線を感じていた。
「あの人、格好良くない?」
「女の人だよね?えっ、無駄にカッコイイ……」
「きれーい!細っ……一緒にいる子も小さくてモデルみたいだけど、ちょっ……手、繋いだよ?」
「羨ましー。カップル?」
こうも混雑しているのに、それらの言葉ははっきりあさひの胸に落ちて、甘い波紋を広げていく。
彩月の指があさひのそれに絡みついたのは、人混みに揉まれそうになったからだ。危なっかしい、そう囁いた彼女の手は、あさひを捕まえ慣れていた。
屋台でフランクフルトを食べ交わす志乃達に目を遣りながら、あさひは言葉も出ず満たされていた。
彩月に訊きたいこと、知りたいことがたくさんある。もしあさひがありふれた少女達と同じほど自由奔放に生きていたらと、ありもしない想像も巡らせた。