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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
* * * * * * *
実の祖母と先に対面していれば、父親の再婚相手という取るに足りない他人を相手に、愛など求めず済んだのか。
あさひに出逢って、彩月の片隅に芽吹いていた不吉な予感は、この二日間を経て確信になった。
父の隆が随分と若い継母を連れてきたのは、彩月が小学校に上がった頃だ。
まだ善悪の境界も覚束ない、物心ついてまもない女児の目には、顔も記憶していない母親より、優しく頼りになる父親が二年も交際していた女の方が、格上に映るらしかった。
加えて当時の彩月にとって、隆は絶対的な存在だった。少なくとも隆は同世代の友人達が羨むほど快活で、よその父親達と比べても、身嗜みにも抜かりなく、よく働く一家の主人でもあった。
その隆が二度目の愛を誓った女に、彩月は条件反射で信頼したのだ。
純粋だった信頼は、歳月を経て盲信に昇りつめていた。
血の繋がらない継母、陽音は天真爛漫で、物事をはっきり言う性格だった。それでいて、彼女の世界は、全てが隆で成り立っていた。
二年の交際を経てからの、結婚して七年が過ぎた頃から、陽音の隆への執着は、苛烈を極めた。
…──無邪気な振りで隆さんの気を惹こうなんて、いやらしい女。
彩月が中学生になった頃、陽音が度々、そうした疑心をぶつけてくるようになった。義理の娘の女としての二次性徴期が、彼女の焦りを扇動したのだ。
隆が彩月に甘かったのも、一因していた。