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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
…──私の姪が、生き別れの娘にどんな反応を見せたか。土産話を楽しみにしているわ。
佳子に土産話を持ち帰るために、彩月が祖母に従わなかったのではない。死ねと言われて死ぬ人間は、初めからそうしている。
実の母親の顔も知らず、育ての母には、ついに愛を得られなかった。
今となっては、どちらも些細だ。
隆が失業して貯金が尽きたあとが、最悪だった。
ほぼ毎日、光熱費を催促する着信や書面を受けるようになった上に、逃げるように出かけていく父親に代わって、彩月が大家の対応をした。家賃の滞納は分かっている、しかし収入が皆無だと説明した末、祖父母の代から数多の物件を受け継いできたその女は、手のひらを返した具合に彩月に同情の念を向けた。そして、場所を移さないかと提案してきた。
彩月にとって、その女は大家以外の何でもなかった。彼女の目的地がいかがわしい路地裏のホテルだろうとは、想像する方が難しかった。
…──美しくて運が良かったわね。私なんかはお金があるからその必要はなかったけれど、何でも従うと約束するなら、滞納分はなかったことにしてあげる。
それが何を意味しているか、すぐ理解出来なかったと言えば嘘になる。
異様に色鮮やかな客室で、大家は着ていたものを全て脱ぐと、毛深い身体を円形の寝台に投げ出した。
彼女の命じるままその肉体を賛美して、愛おしげに肌を舐めて、脚と脚の間の割れ目に舌を入れる。ぬたぬたとした酸味の蜜が溢れたところに指を挿れて、乳房や腹にキスを這わせた。本能にから立てられた女の爪が、彩月の肩に食い込んだ。