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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
凛とした顔立ちに、はっきりした物言いの亜子が家政婦の面接に訪った時、佳子は彼女を羨んだ。
佳子の体つきは女性らしい曲線が際立ち、顔つくりは母譲りのしとやかさが目立つ。父親の後ろ盾がなければ、加虐趣味の良人を持たなかったとしても、おそらく見くびられやすいタイプの人間だったと自覚している。
さんざん佳子をオナホールのごとく扱った良人も、病床で衰弱する頃には、お前は優しい、お前は優しい、と繰り返していた。
それもあって、人は見た目が全てでないにしても、亜子は佳子のないものねだりの対象だった。最近まで主婦業のみに専念していた彼女が、密かに離婚資金を貯めていて、高収入の仕事を探したのも臨時収入だけでは限界があったからだと話した時、佳子の羨望は頂点に達した。
佳子は約三十年、結婚生活が辛くても、ただ耐え忍んでいただけだった。
しかし亜子を羨む気持ちは、彼女が応接室を立ち去る間際に消えた。
…──辞退なさるなら、断って下さって結構ですよ。過去にいきなり現場を見て驚く子がいましたから、そういう業務もあるということだけ、事前にお話しししただけです。
でも、貴女、美しいから女達に喜ばれそう。
そうも言い添えた佳子に亜子が振り返り、挑発的な目を向けた。
…──本当に私が美しいか、確かめてみますか?