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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
この美しい女の良人は、何が不満か、母娘ともに手を挙げている。
亜子の様子からして、娘の方が大事になっていないのは、本当だろう。それは、つまり彼女が娘の分まで、身勝手な男の暴行を受けているということだ。
「前にも話した通り、保険証のいらない医者だって、魔法使いじゃない。酷ければ後遺症だって残る」
「もちろんです。けれど、小松原さんの紹介がなくても、私は同じことをしていました。母親として当然です」
「当然?」
「……ごめんなさい」
そんな顔をさせたいのではない、と、佳子は喉元まで出かけたやるせなさを飲み込んだ。
この館に通っていると、それまでの亜子の概念こそ、特異に思えてくるのだろう。佳子からしても、彼女の娘への愛情は珍しい。
ひと握りの人間には当然のことが、ひと握りの人間には特異。
「貴女は悪いことしてないわ。それより、ご主人の報復が怖くなくなったら、いつでもお嬢さんを連れていらっしゃい。空き部屋はいくらでもあるんですから」
「有り難うございます」
「頼まれている通帳も、順調よ。お節介して良ければ、弁護士や不動産屋も紹介するわ。いつ別れるの?」
「すぐにでも。と言いたいところです。ただ、これから中学も高校も、通わせないといけませんし……大学も選ばせてやりたいですし」