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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
佳子は、また顔色を変えたのだろうか。亜子が口を噤んだ。
「そうそう、明日の午後、また玲沙さんから連絡が入ったわ。休みの予定だったから、お断りした方が良いわよね?」
「いえ、特に予定もありませんから、お引き受けします」
「そう?柳さんのこと気に入ってるから、きっと喜ぶわ」
「あの、彼女、本当に私なんかで……?それに、あんなのが気持ち良いなんて……」
「私にもほとんど理解出来ないけれど、世の中にはそういう人もいるのよ。それに貴女の男装、他の女性達にも好評よ。それでなくても、ここ、ほとんど二十歳前後の子達だし、お姉さん好きには貴重な家政婦さんだわ」
亜子とのそうした会話があった翌週、庭を彩っていた薄紅色は綻んで、欲望のまま着飾る女達のごとく咲き乱れた。
あらゆる種類の桜の壁が辺り一帯を巡るそこに、佳子は特に懇意の女達だけを呼び集めた。優美なテーブル席には、それらを更に豪勢にするティーセットやスイーツが並ぶ。ささやかな勝負事や女達による有志の余興が、花見会場を盛り上げていた。