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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女


 きめこまやかな頰の真上の黒い目が彩月を捉えて、一句発するごとに媚薬の匂いまで醸しかねない妖艶な唇が、口角を上げた。


「時に、貴女がこの奴隷の飼育係なんですってね。私、いやらしくて不道徳的なものが大好きなの。もっとも、道徳なんてもの、私はそれこそ悪徳だと思っているわよ。だって道徳なんてバイアスは、いつでもそれに該当しない人達を追いつめる。つまり道徳だの常識だの言ってる人間に限って、最も不道徳的なのよ」

「姫猫」

「ああ、話が逸れたわ。ふぅん、……瀬尾さんと言ったかしら?貴女、ウチのメイドにしたいくらい綺麗な顔ね。いやらしいものが大好きな私に、刺激的なものを見せて」


 踵を上げて、姫猫が彩月の顎に指をかけて、顔と顔の距離を詰めた。その目は媚びた秋波を放つようにも見てとれるのに、そこに好意は感じられない。

 彩月は特に顔色も変えず、姫猫の手首をやんわり握った。
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