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秘匿の闇市〜Midnight〜
第2章 肉欲の競り市場
客達が購入を決めるまでの検討手段は、多岐に渡る。
さっきのようにキスもあれば、マッサージが所望されることもある。マッサージの場合、商品が客に着衣したまま局部や脚を刺戟したり、客が半裸になった商品を撫で回したりする。客が性器を露出する必要のある行為の場合は、ステージ裏への移動が義務づけはれているため、その様子が他の客達に観賞されることはない。
いずれにしても、商品が客に対応したところで、落札に繋がるとは限らない。
二十番のバッジをつけた女などは、三十分の間に五人の客に股を開いた。初めの一人が購入を決めたところで、それを上回る落札価格を提案した二人目が出てきて、更に三人目が挙手したからだ。五人目に至った時には、二十番はすこぶる値打ちが上がっていた。
どの商品も、あさひほど明るい顔を見せていたことがない。あさひには、彼らの暗い顔が理解し難い。ほとんどが貧困や借金の事情を抱えているらしいにしても、ただ落札されるだけで、親なり親族なりが助かるのだ。育江の教えの受け売りをするとすれば、身近な目上の人間に、恩を返す好機ではないか。何より売られた本人も、数人の例外を除いては、半永久的に快楽に不足しなくなる。
「続きまして、次は二十一番、ステージ中央へ」
あっ、と、あさひは思わず声が出かけた。
ステージ上に立つのが残すところ十五人に減った今まで、気づかなかった。あさひの他にも、嬉々とした顔でここにいる女がいたのだ。