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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女


 佳子は、良人が帰宅すれば進んで全裸になって三つ指をつき、彼を労わる言葉を口にするのが当たり前になっていた。縄が鬱血や亀裂を生めば、良人の足を舐めて感謝を述べた。乳房や尻に火傷を負えば、痛がる佳子を可愛いと言う彼に、発情した獣のように、もっと痛ぶってくれとせがんだ。そうしなければ、想像を絶する折檻が行われた。


 子供を授かれないのは当然だった。佳子と良人の営みに、愛情も語らいもなかったからだ。

 ただ世間知らずで従順な愛玩人形を得た男が、常軌を逸した彼の欲望を叶えていただけ。人間と人形、主人と家畜、人間同士とは程遠かった女と男が、生殖出来るはずがない。結果、親族達は佳子を罵った。

 出来損ない、役立たず、あばずれ女。…………

 彼らの期待に従って、本当に不義でもしてやっていれば良かったと思う。しずしずと良人に従って、娼婦のように振る舞って、彼に怯えらだけだった。
 佳子が少女だった頃、既に大人だった彼は、きっと自分より先に死ぬ。それだけを希望にして、しかしそれまでの数十年を永遠のように感じながら、ただ痛みに耐えていた。
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