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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
佳子に逃げ場も拠り所もなかった。
思春期らしい苦楽を共にしていた友人達は、何不自由なく、労働とも無縁の佳子を羨んで、妬んで、何も言わずに離れて行った。佳子からすれば彼女らの方が羨ましい。妬ましかった。
これだけ耐えても、誰も佳子を肯定しなかった。愛していると繰り返していた良人でさえ、佳子への親族らの攻撃には無関心だった。
「小松原さんっ……」
書斎の扉が開くと同時に、聞き親しんだ女の声が佳子を呼んだ。
眺めていたはずのモニターが、佳子の目路を消えている。代わりに佳子の肩を鷲掴みにする美影の、友人を心配する風な顔が、至近にあった。
「ご無礼をお許し下さい。ノックしても、お返事がありませんでしたから」
「いいえ、貴女なら、……」
「彩月じゃなくて、すみません」
「貴女に心配されたって、嬉しくてよ」
佳子がおどけた調子をしてみせると、つられた具合に美影が笑った。それから彼女はようやく主人から距離をとって、いかがわしい映像を流していたモニターの電源を落とした。
「つけておいて。趣味でもあるけれど、家政婦達の身の安全のために見ておかなくては」
「でしたら、ここからは私が監視します。小松原さんは、お茶でもしてきて下さい。電話して、リビングにお菓子も持って行かせます」
「──……」