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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
今しがたモニターに流していたのは、例のごとく、家政婦の売春現場だ。圭の顧客の小坂夫妻が、暴虐の限りを尽くしていた。
普段の佳子なら、小坂婦人の加虐的なスキンシップに脚と脚の間を濡らして、圭の淫らな腰の動きに法悦していた。友人の良人が彼女を肉棒で貫く様は、獣姦を目の当たりにするのにも似た興奮を得る。
今は、えげつないだけだ。
男の肉棒など彼らの利己的な自尊心や我欲を満たすだけの不用物で、それを備えた肉体も、そこに宿った精神も、佳子に悪感をもたらす。仮に佳子が神と対面する機会を持てたとすれば、直ちに全人類を女に転換するよう苦情を叩きつけるだろう。
先日、父親に言った通り、佳子は余生を送っている。自分がどこまで生きるかは分からないにしても、半ばには至ったろう。
気も遠くなるほどの半生は、生きながらに死んでいた。残す数十年くらい、何も耐えなくて良いと思う。
だから、この館は女にのみ敷居を跨がせる。美しい女達を性交させて、高みの場所で、佳子は法悦するだけだ。
そうした内心を初めて打ち明けたのが、館の使用人達を全員入れ替えることを決めた四年前、真っ先に雇った美影だった。ごく平凡な、しかし幻のように平穏な家庭に生まれ育った彼女の人となりに佳子は惹かれて、家政婦としての信頼と、友情に近いものを彼女に感じた。今も変わらない。
「面倒臭い歳上女で、ごめんなさい」
「流行りのメンヘラってやつですか。残念ながら、面倒じゃないです。その理屈なら、歳下さんの方だって面倒ですし」
「そう?気に入ってると思ってた」
「彩月は放っておけないだけです」
「困ったことに、私のことも。……ね?」
美影は、今度は否定しなかった。