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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
それだけ用心していたにも関わらず、いざ姫猫の屋敷に入ったあさひは、手厚い歓待を受けた。
佳子に関する姫猫の好奇心からのひっきりなしの質問に、あさひは可能な範囲で答えながら、豪華絢爛な彼女の私室で贅を尽くした紅茶や菓子を馳走になった。同席したのはまづると遊、それから紀子という三十代くらいの女と、紹也というなよらかな男、メイド服姿の女達だ。
屋敷自体は古そうなのに、姫猫の部屋は埃一つないばかりか、目を瞠る数のクローゼットを中心に、家具は新品と見られるものばかりだ。彼女が話すに、少しでも傷が付けばすぐに新調しているらしい。十代の頃は、洋服も四度以上同じものを着たことがなかったという。
「仏野は有名な財閥だけれど、正当な血筋はお兄様と私だけなの。労働なんて庶民のすることだけれど、お父様の遺してくれた会社や財産を守っていくため、今は多少はやむを得ないわ」
「幸い、オレには賢い配偶者も三人いるしな。頼もしいよ。ちなみに、こいつは二人。と言っても、誰と誰がセックスしようが、ケチ臭いことは言わない。オレ達は世間様の幸福観を肯定してやるための道具じゃないからな、楽しみや快楽を最優先して、結果、こんなに平和で仲良しだ」
「とても素敵です。私を育ててくれたおばあちゃんも、たった一人を愛したところで、幸せが保証されるわけではないと教えてくれていました」
頷きながら、あさひはダマスクローズの香りを上らせる紅茶を口に含んで、バタークリームで薔薇の装飾が施されたマカロンを取り皿に置く。